第四回ナロラボ杯 ナ・リーグ座談会

第四回ナロラボ杯 ナ・リーグ座談会

『ナロラボの小説コンテスト』の目玉企画「第四回ナロラボ杯」を終えて、参加作品についての座談会をしました。今回はレビュアー二人による雑談になります。※作品別に掲載しています。
※秋月くらげさんですが、当人がツイッターアカウントを削除された関係で、座談会の記録がDMグループから消えてしまったので、今回は掲載できませんでした。申し訳ございません。
会話内容はブログ記事として読みやすいように編集しました。

今回の座談会参加者

ナロラボ(ナ・リーグ主催レビュアー)
当サイト管理人。第一回~第三回ナロラボ杯主催者兼レビュアー。普段はWeb小説投稿に役立つ情報を集めるアンケートなどをおこなっています。第四回ナロラボ杯で短編小説の評価経験は100作品に到達。好きな短編小説は乙一「ZOO」など。

えくぼ
なろう書き手ユーザー。「小説家になろう」における作品の公開文字数の合計は100万文字を超える。第二回ナロラボ杯参加者アンケートにて参加者から推薦の声があったことが決め手となり、ナロラボが直接お声がけさせていただいた。70万字を超える大長編作品を完結させるだけでなく、ホラーや恋愛を中心とした3000字ほどの掌編小説をいくつか発表している。熱心に感想を書くあまり、制限がなければすべての作品に1000字以上の感想を必ず書いてしまうような「他人の作品に嘘をつかない真摯な感想を書く」レビュアーさんである。

牙も祈れば

作品名:牙も祈れば

えくぼ
まずは牙も祈れば、の話をしませんか?

ナロラボ
分かりました。私も一番やりたかった
 

えくぼ
あれは評価が難しい作品でしたね。面白かったんですけれども。オチの「実はサメの牙の声はずっと聞こえていた」については読めていました?

ナロラボ
…… これ、そういう話だったんですか??

えくぼ

最後の「え、この雑学余計じゃない?」ってなったんですけど、あれ、娘さんが牙の説明した雑学を繰り返していて、「娘さんには牙の雑学がきこえてる」という示唆になっていたそうで

えくぼ
私は途中、さんざん牙が雑学を挟んだことと、娘の美人さをサメに喩える、人の名前などの要素から「サメ雑学に詳しい娘」という違和感を「そういうものだ」とスルーしてしまってまして

えくぼ

そういう世界だよね、と

えくぼ
サメの牙が喋ってること、サメの牙が物語に干渉できていたのか?という疑問点を考えながら読み続けると答え合わせにはなるんですが、わかりにくかったな、と
 

ナロラボ
最後の描写で牙の知識と「少女」の知識が一致してるから、そういう話だったんですね……あまりにも自分が読めてなかったことがショックすぎて今必死で読み返してる最中です

えくぼ
そこはわかった上でコメントしたかった!ちくしょう!となってました

えくぼ

なので「サメ雑学」とそレが物語に影響していく様子、そして牙が持ち主を案じるドラマを楽しむ作品かな、という点で加点と減点を繰り返してあの評価に落ち着きました

ナロラボ
なるほど……ちょっと自分が「牙も祈れば」をきちんと読めてないことが分かってすごい落ち込んでいます笑

 
えくぼ
あとはまぁ、天国列車と同じく「場面転換での説明不足」と、知識雑学を出す時に他のセリフや地の文との噛み合わせが読みやすくわかりやすくの工夫でもうちょいいけるやろ!と読みやすさ厳しくなりましたね。そのあたりですかね、多分みなさんより読みやすさと構成の評価が低かったのは

えくぼ
表現の豊富さは誤差レベルでだいたい皆さんと一緒ですね。やや高め

ナロラボ
個人的には「牙も祈れば」、ちょきんぎょ。さんの作品並みに「手堅い」作品だなぁという印象だったのでプレーオフ行けなくて残念だなぁと思ってたんで、何がどうすごいかをガンガン話すつもりだったんですけど……オチを何もわかってなかったんだと分かると、作品についてうかつに話せないですね笑 自分が考えていた話と全然違う話だったなんて

ナロラボ

うーん……これ知るとラストがもったいないっていう意味がすごく分かる。最後、少し長かったとは思ってましたけどオチ自体が思ってたのと違ったと分かると読み方変わるよなぁ…

えくぼ
手堅いというよりは、知識雑学ネタ、サメ、牙擬人化といろんなギミックを盛ってるのに対して、ドラマの中心を家族に当ててたから手堅くみえた作品、かなと思ってました

えくぼ
だから「ラストを読めると分からせるための工夫が欲しい」「ラストが読めないとあそこが冗長」という点で惜しい作品だったかなと思ってました

ナロラボ

かといって私は読み方変わってもたぶん減点はしないですけどね。出オチみたいな「牙の視点」で最後まで分かりやすく物語が書けていたので。「牙である必要ないよね。人でもいいよね」にはならなかったので。今回それについて話をする気満々だったんですけど、ちょっと読めてなかったことがショックすぎて何も言えないっす笑

えくぼ
ですね。牙の視点っていう非生物視点であそこまで短編としてできるのは凄かったな、

病気を治すために魔王を倒さなくちゃならない女の子のお話

作品名:病気を治すために魔王を倒さなくちゃならない女の子のお話

えくぼ
次、何にしましょうか
 

ナロラボ
「病気を治すために魔王を倒さなくちゃならない女の子のお話」やりたいです

えくぼ
はーい

えくぼ
あれ、工夫次第でなろうですごく人気の出るアイデアだと思うんですよ。評価は厳しめにつけてますけど

ナロラボ
はい

えくぼ
ナロラボさんは凄く高い評価でしたよね確か
 

ナロラボ
あれ僕だけ評価高い状態ですね

えくぼ
高くした理由を思いっきり語っちゃいましょうw

ナロラボ
はい。でも個人評価が二番目に高かった「牙も祈れば」とはちがって、個人評価第一位ですけど「これは俺の好みだろうな」と結構思ってます

えくぼ
ふむふむ

ナロラボ
病気の女の子は「短編」として読むとすごく欠点が多いんですよ

えくぼ
ですね。 タイトルにある「魔王を倒す」までの話がまるでなくて、最初と最後で倒すシーンだけ描写され、その後も全部説明で終わってるってのが一番のネックだと思いました。
 

ナロラボ
設定が消化不良ですし、現在時間の話ではなく過去の時間メインになってます。何より一人称1人語りにクセがあるので人は間違いなく選ぶ。だから低い点が出る理由はすごい分かる

えくぼ

内容のメインが両親についてのエピソードの回想でしたしね

ナロラボ

そうですね。魔王じゃなくても成立しちゃう

えくぼ

ただ、私も設定説明とか回想は凄くわかりやすいというか、理解しやすい部類だったんですよねぇ。 や、なろうテンプレというか勇者魔王系統のファンタジーを下地にしているからだ、と言われるとそうなんでしょうけど

ナロラボ

僕は「設定とか回想が分かりやすかった」部分が高い評価じゃなくて「仕草のバリエーションがすごく豊富だった」のが高い評価を与えた理由です

えくぼ

なるほど。 だから、表現の豊富さ4.5

ナロラボ

設定は凝ってて、しかも話の流れも分かりやすい。これを実現させてるのが「文章が映像で思い浮かびやすい」のが理由だなぁと思ってます。

えくぼ
私はそこで読みやすさは高い評価つけてました。つっかえる、わからない、って流れや文章が少なかったので

えくぼ
やっぱりネックは構成ですかねぇ。文章は問題なさそうですし

ナロラボ
そうなんですよ! 僕の過去三回の評価とか、ナロラボ賞用の長文レビューを読んでいただけると分かりやすいんですが、ボクの好みの文章って「一文の役割が物語を進行させるうえでたくさんある」ことなので、この作品はその部分ではかなり優れてる。言葉のチョイスがむちゃくちゃ良い。問題はマジで脚本が「この企画向きじゃない」

えくぼ

一文に対して求めている情報量が大きい、ですかね。 その場合、描写よりも説明主体の文章の方が評価が高くなりそうなのですけどそうなります?

 

ナロラボ

一文で「状況描写+キャラクター説明+設定の説明」を兼ねられる文が多い小説がすごいなぁと思います。演出が考えられてるっていうのかな?

 

今更、キサラは呪われない 

作品名:今更、キサラは呪われない

えくぼ
ああ、なるほど。その意味では「今更、キサラは呪われない」は凄かったんじゃないですかね。 あれ、序盤のセリフや場面ごとの描写がだいたい物語全体の中で別の役割を持ってましたし

ナロラボ
 はい。キサラはシーンの切り替えが自然で、猫の顔の動きやセリフが入ると場面が変わったりするところが良かったと思います。

ナロラボ
が、同じ表現が多いのと表情の表現が「笑う」ばっかりなのがちょっと「幅が狭い」なぁと思ってました。あとちょっと読みづらい

えくぼ
ふむふむ



評価項目についてのお話

えくぼ

少しばかり話は変わるのですが良いでしょうか?

 

ナロラボ

大丈夫ですよ

 

えくぼ
ナロラボ杯の評価項目に「表現の豊富さ」があるのですけど

えくぼ
表現が単調なことによるデメリットって「読むのに飽きる」=「読みづらい」なわけじゃないですか

えくぼ
それ単体で評価項目にした理由とかってあります?

ナロラボ
うーん。難しいですねえ

えくぼ
小説は表現多彩であればある程よい、ではなくて、文体の特徴なのでは?という疑問がありまして

えくぼ

唯一「これについてどう評価しますか?」ではなくて「豊富ですか?」と聞いている項目なので

ナロラボ

うーんなんていうか、項目に「様々な解釈の余地がある」からですかね。なるべく加点しやすくしたというか

ナロラボ

表現の豊富さっていうのは別に「表現の美しさ」や「語彙の豊富さ」だけじゃないんですよ。

・「演出する手段の多さ」

・「場面切り替えの手段の豊富さ」

・「直接表現せずに、いかに文章表現できるか」
みたいな解釈の余地が大きい項目にするつもりで作ったんです。
が、結果「美しい文章表現」が優れているかとか、そういう面でしかレビュアーさんに評価してもらえてない場合が多い」のが現状、って感じなんです笑

えくぼ

あー、つまり文章表現レベルじゃなくて「伝えたいことを的確に伝えつつ、飽きさせない工夫」が混じっとった、と

えくぼ

私はそれを構成と読みやすさに分解してぶち込んでいたので、そこで評価が変わっていたのですね

えくぼ
それは勿体なかったなぁと思いました、はい

ナロラボ
もっというと、僕から高い評価出すなら、「小道具の使い方」と「直接表現をしない工夫」、あとは「この文章がきっかけに物語の雰囲気やシーン切り替えに意味を成している」と思う文章があるかどうか、みたいなところ凝ってると評価されやすいと思います

ナロラボ
なんていうか、前回のナロラボ賞取った「喫茶店の渋おじさまと、常連ちゃん」とかだったら、主人公を歩かせるだけで「キャラの性格」「世界観」「歩いた速度による心情の変化」「場面の転換」みたいなの全部書けてるんですよ

えくぼ
ですよねー。 あの先生、ほんとそういうところ強いんですからずるいっすわ(食べざるを得ない)

ナロラボ
特別美しくなくても、露骨に上手さを見せつけなくても「この人は色んな歩かせ方を知ってるなぁー」と思えたら表現の豊富さは加点してます

Hallo! Ween’$ Night!

作品名:Hallo! Ween’$ Night!

えくぼ

あーだからナロラボさん、ハロウィンの短編も表現の豊富さ高かったのですね

えくぼ
この流れで折角なのでハロウィンの話もしましょうか

ナロラボ

ハロウィンは100%好みで得点を挙げています笑  正確に言うと「良さが言語化できてない」です

えくぼ
逆に私はあれは好みで若干下がったきがします。ああいう幻想的な話って物語の理解がしづらかったというか。別に難しい話をしてないのに読み直しを求められたんですよね

えくぼ
え?何言った?今?みたいな

えくぼ
言ってることはわかるけど、話の流れが分かりにくい。その場に起こっていることを鮮明に描写している一方で、物語の説明になってなくて、ワンクッション置いて読み取る必要があった、かなと

ナロラボ

分かります。高得点出しておきながら言うのはあれなんですけどハロウィン何書いてあるか分かんないですからね笑

えくぼ
ナロラボさんwww 高い評価つけてる二つ普通に好みの問題www

ナロラボ
いや、病気の女の子の場合は「私の評価基準だと高くなるけど、低くなる理由は明らか」って感じなんですけど、 ハロウィンは「ナロラボ杯の評価基準だと低くなるはずなんだけど、話はなぜか分かる。良さが言語化できてない」みたいな感じです。なのでハロウィンだけが完全に好み

えくぼ
評価軸が異なるとそうなりますよねぇ。雰囲気は良かったです (ふわっとした褒め言葉)

えくぼ
私の場合、ざっと読んで欠点がハッキリとあるなと感じた場合、「これどっかで評価落ちてるな」とどこに分類されるのか分析してそこを低くつけちゃうのでなんともアレですが
 

ナロラボ
できる限り個人的に評価を高くした理由を言語化すると「直接表現が少ないから」かなとは思います。けど、少なすぎて「敵って何?」「それ雰囲気で書いてない?」「この文章はどういう意味」「今何を目的に行動してて誰が味方なの?」っていう印象はあります。

えくぼ
そのふわっと好き!みたいなのも案外、読み方の異なる人に見せたらあっさり言語化してくれて、ストンといったり、良さを見つけて評価してくれるかもしれませんしねぇ

えくぼ
直接表現が少ない=技量次第では読み手に読む能力が求められる、ですからね

ナロラボ
でもこれたぶん直接説明増やして文章化したら良さ半減してしまう気はします

ナロラボ
固有名詞が多いのに、その固有名詞の説明がほぼないので、普通は読んでいて「何が書いてあるのか分からなくなる」はずなんですよ

えくぼ
SFとかでありがちな現象ですね

ナロラボ
そうですね。っぽい言葉は並んでるけど何書いてあるか分からない

えくぼ
それが伝わるかどうかって「書き手のセンス」と「読み手」が、噛み合うかどうかですしね。わかりやすい字面かどうか、なんて

ナロラボ

あーなるほど。自分の印象は 説明がないのになんとなく文章から映像が分かるので「ライトノベル的世界観を表現する単語とセリフ選びが抜群に上手」って思ったんですけど。単に「私の感性で理解できる範囲と作者の理解できる範囲」が近いから想像できるだけかもしれないですね

えくぼ
だからそのセンスが良かったのではないでしょうか。言葉選びが

ナロラボ
アニメーションで出来たショートムービーみたいなイメージの短編でした

スーパーヒーロー大好き

作品名:スーパーヒーロー大好き

ナロラボ

最後、スーパーヒーロー大好きの話をしたい

 

えくぼ

ああ、あれ!  あれを何故取り上げようと思いました?

ナロラボ
作品ジャンルでひいきするつもりは全くないですけど、僕はああいうタイプの小説にこの企画勝ち上がってほしいので笑 

えくぼ

うーむ

ナロラボ
なんていうか「玄人好みで、複雑な設定のストーリー」が勝ち上がってるのって、個人的にはつまんないんですよ

ナロラボ
「いかにもそれらしい話」が「いかにもそれらしく評価される」コンテストって評価者の承認欲求満たしてる感じになるので内輪受けになりやすい。「評価してる俺カッケー」の世界になったら終わりだと思うんです。。あとは「軽い文体の小説が評価されてない!」って言われるのが嫌なんです。
 
ナロラボ
ということで今回タイムライン上でもそこそこ人気があった軽い文体の作品「スーパーヒーロー大好き」をどう評価したのか説明する必要はあるなと思います

えくぼ

いや、あれね。ターゲットと題材がズレてるのに対して、両方を取り込む工夫、あるいはどちらかに偏らせる工夫が足りなかったと感じたんですよ

えくぼ
ストーリーはシンプルで、物語の理解は凄くしやすかった。描写に過不足がない、という点ではそれこそプレーオフ組と遜色はなかったと思います

えくぼ
その噛み合わなさを評価しようとしたら全体的にそれぞれの項目を下げることになっていって、結果「物足りない」って感想になったのです

えくぼ

実際私も読みやすさでは、高い評価つけてますし

えくぼ
なのであれこそ、「何も考えずに娯楽性を求めて読ませると、なろうでは読者がどこかで引っかかる」と感じました

ナロラボ

うーん。もっと具体的に説明できないですかね.実際僕もそこまで高い評価ではないので僕が話しても同じ感じになると思いますけど

ナロラボ

えくぼさんの考えてることをもうちょっと具体的に言ってもらえればなんとなくまとまりそうな気がするので

えくぼ
えっとですね

 

・主人公が女性で人間関係は彼女をめぐる、元彼に心を残しつつ、幼馴染に支えられてそちらに惚れる

・題材は力を得た主人公が、たとえ怖がられても自らの意思で人を助けたことに後悔はしないと胸をはる話

 


えくぼ

上は三角関係の恋愛もの

下は典型的なヒーローもの

えくぼ

この二つはつまり、見た目には男性向けなのに読んで楽しめる要素が女性に偏っている、なんですね

えくぼ

 

で、男性に楽しめるように作っているか?と言われると元彼からすると「彼女が突然力を得たので怖がって逃げてしまった」で幼馴染からすると「好きな幼馴染がろくでもない男を諦められないでいるけど、ヒーローへの憧れと彼女への好意で手助けしていたらラストにようやく可能性が見えた」なんです


えくぼ

で、その中で主人公は「彼氏に心を残しているのに、突然現れた金持ちの幼馴染の家に泊まり込む」という動きを見せるわけです

えくぼ

ある種の「略奪」系統に近いのですよね

えくぼ

 

おそらくなんですけどこうした、「恋愛感情のない男が自分を好きでいるのに気が付かず思わせぶりな行動を取り続ける」というのは、「まぁ一緒にいたら時間の問題だろ」と割り切って落とそうとする幼馴染に感情移入できないと、「なぜ気づかない」「何故幼馴染ではダメなのだ」とやきもきして読むわけです


えくぼ

しかしながら、物語のベースが「ヒーローもの」である以上、それが解決する保証がまるでない


えくぼ

そこが、読んでいる間、どのターゲット層がどこにのめり込んで読めば良いのだ??となってしまった理由になります

えくぼ

とまぁ、ざっとこんな感じですかね。具体化すると

えくぼ

以上のことから「主人公の性格は理解はできるが魅力的ではない。幼馴染は好き。元彼にいたってはただの情けないやつ」というメインキャラ3人のうち、2人に魅力を感じられないのでキャラをおさえめ、そしてそれの原因たる「アイデアの噛み合せ方」にあたる構成も無難な評価にとどまりました

 

ナロラボ
なるほどぉ。考えてること全然違いました笑

えくぼ
人間関係とそれ以外の題材をもんだいなく組み合わせて、読みやすい文体で問題なく理解させたという点では「技術そのもの」は評価できても,それを作品に反映させた結果の評価が高くできなかった、が回答です。 物語の中でもエンタメとしての評価でしたので

ナロラボ
私の場合、恐怖院先生、第二回がすさまじく良い出来だったのでやっぱり比較してしまう部分は少なからずあっただろうなと思います。なるべく意識しないように評価したつもりですが、同じ評価者がつける以上ある程度期待値は高まってしまうので、不利だったかもしれないです

えくぼ
星空めろりんきゅうですね

ナロラボ
 しかし、その上で述べるなら

前半は面白い。 後半が「予想を超える部分がない」

これがまず端的な感想。分かりやすいんだけど、星空めろりんきゅうの時みたいに「一文一文が話の役割としてすごく重要」みたいなのが、あまり見られない


ナロラボ

こういうのは面白いんですよ

 

 どうしていきなり……と思ったが、細々とした心当たりは意外にもたくさんあった。

 昨日、化学の授業でうっかりと意味不明の煙を吸い込んだり、漏電気味のドライヤーに触って軽く電気ショックを受けたりもした。夢の中で謎の老人に『力を与えてやろう』と言われたりもしたし、魔術の本を読みながらついつい呪文を口ずさんだりもした。そういえば見たこともない蜘蛛に腕を噛まれたりもしたっけ。

 そのどれが原因なのか。

 あるいはどれもが原因じゃないのかもしれないが――。

 

えくぼ

ギャグセンスは良いんですよね。私もその場面ふふって笑いましたw

ナロラボ

で、「主人公の女の子が突然すごい力を得てしまった!」を説明する導入としては、めろりんきゅうと比較してもかなり良い出来なんです

ナロラボ

ここからはえくぼさんと似てて「キャラの掘り下げが甘い」「必要のない描写も多い」という印象を受けました。ナロラボ杯的な評価をするなら、描写をもっと凝ってほしかったですね

ナロラボ

分かりやすいところで言えば、ヒーローが好きな健くんが「ヒーローがどれくらい好きなのか」の表現がちょっと作りこみ甘い。

えくぼ
ヒーローが好きってのが建前レベルでしたからね

えくぼ
彼女の協力を申し出る動機として自然なものを用意しつつ、実は彼女のことが――としているわけですが、それだとタイトルに噛み合わなくなる。

えくぼ
ヒーローものとして見るならギミックも伏線もなく、ただ順当に力を得た、訓練してコントロール、事件解決なのでそれこそ捻りは全くないですからね

ナロラボ
プロと比較するのは申し訳ないんですけど、
ジャンプで連載されてる「僕のヒーローアカデミア」のデクくんが「ヒーロー好き」っていうのは、「ヒーローになれないよ。才能ないよ」って言われてるのに、ノートを何冊も書いたりしてたり、他にも頷き方とか仕草とか口調のレベルで「ヒーロー研究大好き少年」が描かれてるわけじゃないですか

ナロラボ
で、それと比べると小道具の凝り具合がちょっと足りないかな。文体が軽いことが文章下手に見えたみたいなのは全くなくて「もっと小道具凝らないとキャラが立たないぞ!」と思います

えくぼ
それが出てると、力を得たのは女の子でも主人公が一気に幼馴染に引っ張られてそちらに寄りますね

ナロラボ

もっと身近なところで言うと、今回ナロラボ賞の「 ポニーテールは超能力とともに」は詐欺師の子がしゃべればしゃべるほど胡散臭く感じるところが、キャラ作りで凝ってるじゃないですか

えくぼ
あれはキャラの魅せ方が細やかでしたからね。やりとりで言えば一番好みの二人でした。超能力を持つ者と持たない者の自らへの向き合い方が、それぞれ言動を通して出ていましたし

ナロラボ

第三回ナロラボ賞の「喫茶店の渋おじさまと、常連ちゃん」は女の子が「フランス」って言葉を聞くと喜んだり「背の小ささ」を表現するための道具が豊富だったりするじゃないですか

えくぼ
あれは小道具すべてが世界観とキャラを同時に魅せていましたからね。 喫茶店の売りをマスターの人柄に直結させてみたり
 

ナロラボ

で、第二回ナロラボ賞、同じ作者さんですけど「星空めろりんきゅう」は主人公の女の子が気が弱くて素直ででも幹人くんのことが大好き、なことを幹人くんに振り回されることで表現してたじゃないですか

ナロラボ

しかし今回の健くんは

>そこは筋骨隆々のプロレスラーやアメコミヒーローのポスターで壁中が埋まっていた。

 そう言えば彼は格闘技オタクでヒーローオタクでもあったのだ。

ちょっと表現するための道具が「ヒーロー好き」のテンプレ過ぎるんですよ。「ヒーロー好き」を表現するために思いついた手段がちょっと安易

えくぼ

そうですねぇ。
ナロラボさんは「結果を出力するために必要な技術」を重視していて、私は「何を魅せれば望みの結果を出せるかという理屈」を重視してるようには感じます

 

ナロラボ

ああーそうかもしれないです

えくぼ

キャラのテンプレ、は記号的、表面的なものなので掘り下げて作りこんで細やかに魅せれば、テンプレではなくなる、と思っているので小道具に工夫を!というのは賛成です

ナロラボ

ただこれはえくぼさんの言う通り「小道具工夫してキャラを立たせれば」というレベルではなく「脚本を早い段階からまるごと変えて、描写を分厚くしないと中途半端に見える」方が問題かもしれないですね


えくぼ

ですね。既に魅せるものが決まっていれば、それについて「ここ順番かえて、過去貰ったものとか挟むと良いよね」などと話をするのですが

えくぼ
私は文章技術の話をする場合、個々の場面をとりあげて改稿案を出すレベルになってくるのですが、それは「魅せるものを理解してから」だと考えているので多分中身の話をする時には後回しもしくは総合でざっくりと話してしまってるというべきか

えくぼ
今回は「キャラ」「アイデア」「ストーリー」のかみあわせを、文章だけで全部解決しよう!となると難しいのでは?と思ってました

 

ナロラボ

うーん難しい問題だと思いますが作者さんには頑張ってほしいですね。

ナロラボ
色んな道具が急登場する癖(いきなり私立の学校行ってる幼馴染の登場、「星空めろりんきゅう」ならいきなり幹人くんが告白)がある作者さんだと思うので、「より自然な流れでインパクトのあるフレーズを出せる」ようになると、幅が広がるんじゃないかなと思います

最後に


時間の都合上全ての作品についてお話できたわけではありませんが、有意義な時間でした!

12月中に、第四回のプレーオフのレビュアー座談会記事も公開する予定ですので、よろしくお願いします!